自由
誰も自由を求めぬものはない。が、それは外見だけである。実は誰も肚の底では少しも自由を求めていない。その証拠には人命を奪うことに少しも躊躇しない無頼漢さえ、金甌無欠の国家の為に某某を殺したと言っているではないか? しかし自由とは我我の行為に何の拘束もないことであり、即ち神だの道徳だの或は又社会的習慣だのと連帯責任を負うことを潔しとしないものである。
又
自由は山巓の空気に似ている。どちらも弱い者には堪えることは出来ない。
又
まことに自由を眺めることは直ちに神々の顔を見ることである。
又
自由主義、自由恋愛、自由貿易、――どの「自由」も生憎杯の中に多量の水を混じている。しかも大抵はたまり水を。